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『明朝体の教室』刊行記念展に行ってきました

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Nakayama

『明朝体の教室』刊行記念展に行ってきました

公開日:2024/3/30

先々週になりますが、とあるイベントに行ってきました。その名も、『明朝体の教室』刊行記念展「鳥海修 本と文字と私」。

以前にも少し触れた、あの「游明朝」や「游ゴシック」をはじめとする多くの書体を生み出している鳥海修さんの新刊本のイベントが東京・浅草のBook&Designという場所で行われ、そこで制作に関わった書体が使用された書籍や、書体の原字(デジタルでトレースされる前の鉛筆やペンで書かれた下書きのようなもの)が今回特別に展示されるというので、いちファンとしては行かないわけにはいきませんでした!

この日は平日金曜日にも関わらず想像以上にお客さんがいて賑わっていて、その中になんと鳥海さんもいらっしゃるじゃないですか。今日だけメディアの取材で現場に居られたそう。これは運が良かった。

さっそく展示物を見てまわりました。

フロアの壁に貼ってあったのはこれまで作ってきた書体の原字です。
これは鳥海さんの「本をつくる」という著書に文字作りの工程がその時のエピソードと共に詳細に解説されていたものと恐らく同じもので、当然ですが一字一字手書きで書かれていて細かい修正も修正ペンでされてあったりそのリアルを実際に見ることができてちょっと感激。

そしてフロア中央には鳥海さんが制作に関わった書体が使われた43もの書籍・雑誌がテーブル一面に並べられていました。入り口でそれぞれの書籍についての解説がしてあるプリントが配られたので、それをみながら全ての書籍に目を通しました。


その中でもまず目についたのは「旬がまるごと」という雑誌。

これ、毎号1つの食材だけにフォーカスして旬の食材の魅力やトリビアを徹底的に伝えてくれるというもので、内容としても面白い雑誌なんですけどインフォグラフィックやあしらいなど決して難しいことはしていなくてもシンプルなデザインの基礎が詰まったような雑誌だと個人的に思っていて、書体は「游ゴシック」と「游明朝」が使われているんですね。
これらの書体がをリリースされて比較的早くに雑誌のメイン書体として採用されたんだそうですよ。目の付け所すご。

今は刊行していなく実は手にとってみたのはこれが初めて。
持って帰りたくなりましたw

あとは先ほど出た「本をつくる」に付属している、詩人・谷川俊太郎さんの詩集「私たちの文字」も置いてあって良かった。厳選された和紙に写真のような蛇腹折りで全て手製本。谷川さんのために作られた「朝靄」書体が活版印刷で作られているという製本・出版技術の最高峰の1つと言っても過言ではないでしょう。

少しお客さんが減ってきたところで鳥海さんが書体の原字や書籍についてのエピソードを私たちに語ってくれたり、直接質問をしてそれについて答えてもらったりして他のフォント好きについ話したくなるような話などを聞けて貴重な時間を過ごせました。

1つめっちゃ印象に残ってるのは濁点(゛)の話ですね。
「ば」「び」「ぶ」「べ」「ぼ」の原字を例に見るとこんな感じ。文字の濁点に注目してみてください。

文字を正方形の仮想ボディ内に収めることを意識する上で、各文字によって幅や高さが異なるため全く同じ濁点を配置するわけにはいきません。ただし濁点の大きさ自体は変えずに統一するということは前提です。
その上で気をつけているポイントが点同士の間隔を変えることと点の角度を変えることだそうです。
字面のスペースに余裕のある「ぶ」や「べ」は点同士の間隔を広く角度は平らめにしていて、字面のスペースに余裕のない「ば」「び」「ぼ」は点同士の間隔を狭く角度をつけています。

こんなこと言われるまで全く気にならないですよね?はい、僕は全部点は使い回しているというか1つ1つ調整なんてしてないと思ってました・・。気にならないということは書体設計として成功で、違和感を取り除くことができているということではなんでしょうね。

他にもこのような細かい話がいっぱいあり、文字づくりの深さを知ることができました。
何千回も聞かれたような質問に対しても丁寧に答えていただいたのが印象的でした。ありがとうございました。
最後に記念に📸

制作記事が続いたのもあるしちょっとブログっぽいことを書いてみました。
東京にいるとオフラインのイベントが沢山あるのでめっちゃいいっすね。
また面白いことがあれば記事にしたいと思います!

今日紹介した書籍は下記にまとめているので興味のある方は見てみてください👐